星景向けのお手頃な超広角マニュアルレンズと言えば、SAMYANG MF 14mm f2.8が有名ですが、PERGEAR 14mm F2.8 IIも3万円台のお手頃価格で魅力的なスペックを備えています。実際にPERGEAR 14mm F2.8 IIを購入したので星景撮影用としての目線で作例と共にレビューします。
PERGEAR 14mm F2.8 IIのスペックと特徴
Pergear 14mm F2.8 IIはフルサイズ対応のMF(マニュアルフォーカス)レンズで、対応マウントはソニーE、ニコンZ、キヤノンRF、ライカLが用意されています。電子接点がないので、レンズのEXIFデータは記録されません。第二世代になって、サイズがよりコンパクトで軽量になって光学性能も改善されています。
絞りはf2.8~f22でクリック感があり、f2.8~f5.6までは1/2段ごと、f5.6以降は1段ごとの手動での調整が可能になります。
フォーカスリングは程良いトルク感がありピント合わせはしやすく、軽く触れただけではズレる事はないので安心です。
SAMYANG MF 14mm f2.8 MK2とのスペック比較表
同価格帯のライバルのSAMYANG MF 14mm f2.8 MK2とスペックを比較すると、Pergear 14mm F2.8 IIの方がコンパクトで軽量、機能面では一長一短で悩ましい選択となります。
PERGEAR 14mm F2.8 II | SAMYANG MF 14mm f2.8 MK2 | |
---|---|---|
重量 | 500g | 641g |
サイズ | 直径68.2×高78mm | 直径87×高93.6mm |
絞り | f2.8~f22 | f2.8~f22 |
最短撮影距離 | 0.22m | 0.28m |
フィルター径 | 82mm(フィルターアダプター装着時) | × |
防塵防滴 | × | 〇 |
その他 | 82mmフィルターアダプター付属 | フォーカスロック 絞りデクリック機構(無段階) |
コンパクトでしっかりとした作り
Pergear 14mm F2.8 IIのサイズは直径68.2mm×高78mmと手の平に収まる大きさで14mmとしては非常にコンパクトですが、金属製でしっかりとした作りで重量が500gあるので、実際に手にするとずっしり感があり安っぽさは感じません。

手の平サイズでコンパクトなPergear 14mm F2.8 II
フロントのレンズキャップも金属製です。

金属製のレンズキャップ
SONY a7R IVに装着した感じは非常にコンパクトです。

SONY a7R IVにPergear 14mm F2.8 II装着するとコンパクトさがわかる
82mmのフィルターが使用可能
14mmの超広角レンズだとフィルター装着不可の場合がほとんどで、サードパーティ製の150mm幅の角型フィルター専用アダプターが必要だったりしますが、Pergear 14mm F2.8 IIは脱着可能な金属製のフィルターアダプターが標準で付属しています。
付属のフィルターアダプターは82mmの円形フィルターが使用可能で、超広角レンズでありながら気軽にフィルターを使用した撮影が楽しめるのは非常に良いと思います。

Pergear 14mm F2.8 IIに付属している金属製のフィルターアダプター

Pergear 14mm F2.8 IIのフィルターアダプターを装着
また、円形フィルターだけでなく100mm幅の角型フィルターを装着すれば、フィルターの重ね付けも可能なので撮影の幅が無限に広がります。
試しにHaida M10の角型フィルターを装着してみましたが、ケラレることなく快適に使用できます。

角型フィルターHaida M10も装着可能
Pergear 14mm F2.8 IIに、星景なら光害カットフィルターやソフトフィルター、風景写真なら高濃度のNDフィルターで長時間露光のスローシャッターも可能になり、様々なスタイルの撮影が楽しめそうです。
実例での性能テスト
コマ収差
星景レンズとして使う場合、やはり気になるのがコマ収差(サジタルコマフレア)ではないかと思います。実際に高画素機のSony a7R IVにPergear 14mm F2.8 IIを装着して、絞り開放f2.8からf5.6まで絞ったコマ収差と周辺減光の変化を星空を撮影して比較テストしてみました。シャッタースピードは15秒に統一して、露出がほぼ同じになる様にISO感度を変更して調整しています。
結論から言うと、Pergear 14mm F2.8 IIのコマ収差は、値段を考えるとそこまで悪くはないと言う結果です。やはり超広角レンズと言う事もあり、四隅周辺の星は完璧な点とはならないのですが、ツバメのように尖がったコマ収差ではなく、一方が少しだけ尖った形状のコマ収差です。
絞り開放f2.8
まずは絞り開放f2.8で撮影した画像全体を見てみると、拡大しなければコマ収差は全く気にならないレベルです。ただし、周辺減光は結構あります。マイナーなレンズなので、Lightroomでもレンズプロファイルがない為、手動で画像を見ながら補正する必要があります。
SONY ILCE-7RM4 (0mm, f/0, 15 sec, ISO3200)
次に絞り値f2.8で撮影した星空の画像の中央と四隅を等倍(100%)でトリミングした画像です。
中央付近はシャープで気になるコマ収差は見られません。明るめの星にフリンジが僅かに発生していますが、気にならないレベルなので問題ないと思います。

コマ収差テスト:f2.8の中央
左上付近は、中央方向の一方へ伸びる尖ったコマ収差が発生しているのが確認できます。予想よりも良く抑えられている印象です。

コマ収差テスト:f2.8の左上
右上付近も中央方向の一方へ伸びる尖ったコマ収差が発生していますが、左上よりは控えめです。

コマ収差テスト:f2.8の右上
左下付近は星小さいので分かりにくいですが、同様に中央方向の一方へ伸びる尖ったコマ収差が発生しています。

コマ収差テスト:f2.8の左下
最後に右下付近。シャッタースピードが15秒なので星が流れて細長くなっていますが、コマ収差は極僅かな印象です。

コマ収差テスト:f2.8の右下
f2.8からf5.6までの比較
絞り開放のf2.8から1/2段ごと、f2.8、f3.5、f4、f4.5、f5.6で撮影した画像で比較しました。サジタルコマフレアの変化が分かりやすい左下付近を等倍(100%)にトリミングしています。
絞り開放のf2.8とそれぞれを比較してみると、f3.5に絞ってもコマ収差の改善がほとんど見られません。



1段分絞ったf4.0だとシャープさが増し、点に近くなりますが、コマ収差に変化はあまり無いように見えます。







f4.5になるとコマ収差の尖った部分が若干丸くなり、やや改善が見られます。







さすがに2段分絞ったf5.6だとシャープさもありコマ収差の尖った部分が軽減され、星が点に近くなりました。







四隅のシャープネス
超広角になると高性能なレンズであってもやはり四隅付近はややシャープさが欠ける傾向にありますが、お手頃価格のPergear 14mm F2.8 IIの四隅のシャープネスの性能をテストしてみました。星景写真だとシャープネスが分かりにくいので、日中に撮影した写真で、f2.8~f5.6までは1/2段ごと、f5.6以降は1段でf8までの計6枚で比較しました。
結論から言うと、f4かf4.5位まで絞るとややシャープさが得られ、f5.6である程度のシャープさ、f8まで絞れば四隅でも十分なシャープさが得られるという結果になりました。
星景の前景を別撮りする場合は、f4かf4.5まで絞るとそれなりの解像感のある仕上がりになるかと思います。風景写真であれば、f8まで絞るのが良さそうです。


分かりやすいように地平線が対角線上になるように撮影
左上部分を等倍(100%)でトリミングした画像で比較してみます。
1/2段絞ったf3.5だと、ほとんど変化は見られません。








f4.0、f4.5位になると、ややシャープになった感じはしますが、解像感はいまひとつです。
















2段分絞ったf5.6になると、かなりシャープ感が増したことが一目瞭然でわかります。現像時にソフトウェアで補正すれば、十分な解像感は得られそうです。








f8.0であれば四隅でも十分なシャープ感があり、問題なさそうです。








逆光耐性
Pergear 14mm F2.8 IIは強い光源が画角内にあるとゴーストが出やすいので、逆光耐性はあまり良くない印象です。角度によっては赤や緑色の大きな円状のゴーストが写り込みやすく非常に厄介で、レタッチでは補正するのは難しいかと思います。
星景撮影で使用する場合は、ゴーストが出ていてもカメラの液晶だと気付きにくいので、強めの街灯や月が画角内もしくは画角の近くにある時は注意が必要です。


逆光だと赤色や緑のゴーストが出やすい


撮影時には気づきにくいゴーストが写り込む
Pergear 14mm F2.8 IIで撮影した作例
14mmの超広角レンズならではのパースの効いたダイナミックな構図で撮影したインパクトのある星景写真。ノイズ軽減の為に、星空は固定撮影で複数枚をSequatorでスタックし、ISO感度を抑えて別撮りた風景部分と最終的に合成しています。
星空:f2.8、ISO 6400、シャッタースピード15秒
改善して欲しい点
同価格帯でライバルとなるSAMYANG MF 14mm F2.8 MK2には備わっている一部機能が、後発のPergear 14mm F2.8 IIには備わっていないのが非常に残念な所です。
防塵防滴(ウェザーシーリング)
Pergear 14mm F2.8 IIの残念な点は防塵防滴仕様ではない事です。比較的過酷な環境下で行う星景撮影では、やはり防塵防滴仕様のレンズの方が安心感があります。
フォーカスリングのロック機能
星景写真を撮影する上で欲しいのがフォーカスリングを固定するロック機能です。Pergear 14mm F2.8 IIのフォーカスリングは重めなのでズレにくいのですが、固定できるロック機能があるとより便利かと思います。
絞りの幅が大雑把
星景撮影ではあまり影響ありませんが、絞りがf2.8~f5.6までは1/2段ごと、f5.6以降は1段ごとの調整しかできなく、繊細な絞り調整ができない点はやや不満を感じます。特に風景写真を少し絞って撮影したい場合を考慮すると最低でも全域で1/2段ごとの調整ができた方が使い勝手は格段に良くなるかと思います。
根本付近の出っ張り形状
Pergear 14mm F2.8 IIの根元付近の出っ張り部分が回転リングのATOLLと干渉してしまい、レンズを装着する事が出来なくなります。Pergear 14mm F2.8 IIを使用する場合は、ATOLLを取り外す必要があるので少し面倒です。
この出っ張りは、見た目は回りそうですが全く回りません。機能が備わっている訳でもなくただのデザインなので、ATOLLユーザーにとっては出っ張りは無いほうが良いです。


出っ張り部分がATOLLに干渉するので無くして欲しい
まとめ
Pergear 14mm F2.8 IIは、正直、全く期待していなかったのですが、想像していたよりも星景用として十分使えるレンズかと思います。超広角レンズという事もあり、絞り開放のf2.8だと四隅周辺の減光やシャープさにやや不満があるものの、コマ収差やフリンジの少なさを考えると、値段の割には頑張っている方ではないかと思います。
また、14mmの超広角でありながら、フィルターが装着できるのは、Pergear 14mm F2.8 IIの大きなアドバンテージであり、星景だけでなく、風景撮影が手軽に楽しめる唯一無二の低価格レンズです。逆光時のゴーストを気を付ければ、フィルターを駆使して色々な撮影が楽しめるレンズではないでしょうか?
星景初心者やそこそこな画質で十分な人にはおすすめできるレンズですが、資金に余裕があって本格派のレンズを探している人は、Sigma 14mm F1.4 DG DN Artを買った方が後悔はしないと思います。
※Pergear 14mm F2.8 IIは新品でも、保証書はなく、レンズ本体や元箱にもシリアルナンバーの記載がありませんが、1年保証はあるとの事です。シリアルナンバーなしで、どうやって製品管理をしているのか不明ですが…。