一眼カメラのレンズを選ぶ際に、多くの人が「画質」や「解像力」などを気にすると思いますが、レンズの性能を数値で把握するために重要な指標の一つにMTF(Modulation Transfer Function)曲線というのがあり、各メーカーが公表しています。今回は、レンズ選びの参考になるMTF曲線の見方を詳しく解説します。
MTF曲線とは
MTF(Modulation Transfer Function)曲線とは、日本語にすると変調伝達関数という意味で、レンズを通して光がどれだけ忠実にセンサーに伝達できるかを数値化しグラフにしたものです。横軸(X軸)にはイメージセンサー中心からの距離、縦軸(Y軸)にはコントラスト値、それらを曲線にしてレンズ性能を可視化しています。
MTF曲線はレンズメーカーが公式に公開することが多く、そのグラフを見ればレンズの性能や特性をある程度把握することができます。

MTF曲線のサンプル
MTF曲線の見方
MTF曲線の見方は、横軸と縦軸が何を表しているのかを把握できれば非常に簡単です。
メーカーが公表しているMTF曲線の多くは絞り開放時のデータがほとんどですが、絞り値を表示して絞り値ごとの複数のMTF曲線を公表する場合もあります。
また、ズームレンズの場合は2つのMTF曲線が用意されていて、一つは広角側(ワイド端)で、もう一つは望遠側(テレ端)になります。
横軸
MTF曲線のグラフの横軸(X軸)は、イメージセンサーの中心部からの距離を表していて、単位はmmで、0、5、10、15、20と書かれてあるのが一般的です。
フルサイズ用のレンズであれば、フルサイズのイメージセンサーの大きさが36×24mmで、対角線が約43.27mmなので、中心部からの距離がその半分の約21.6mmになり、グラフの横軸の最大が21.6mmとなっています。横軸の数値0と言うのがレンズの中心で、数値が大きくなるほどレンズの隅付近という事になります。
APS-C用レンズであれば、APS-Cのイメージセンサーの大きさが23.6×15.8mmで、対角線が約28.4mm、その半分の14.2mmが中心から端までの距離になるので、14.2mm以降の部分は無視しても問題ありません。

MTF曲線の横軸はイメージセンサーの中心からの距離
縦軸
MTF曲線のグラフの縦軸(Y軸)は、コントラストと解像力(シャープネス)を最大1.0として表しています。一般的に0.8以上だと優秀、0.6以上だと良好なレンズだと言われています。広角レンズになるほど端付近の数値は下がる傾向にあるのが特徴です。

MTF曲線のコントラスト値
10と30(2色の線)の違い
MTF曲線の10と30は空間周波数を意味していて、10が低周波、30が高周波となります。大抵は分かりやすいように赤と青に色分けしている事が多いですが、場合によっては別の色を使う時もあります。
空間周波数は1mmあたりの正弦波の本数(本/mm)を示したもので、10と言うのは10本/mm、30と言うのは30本/mmと言う意味で、それぞれ10(赤線)がコントラスト、30(青線)が解像力を表していて、数値が1.0に近いほど高性能という事になります。
空間周波数は難しいのでMTF曲線のコントラストと解像力(シャープネス)だけ覚えておけば問題ないと思います。
実線と破線の違い
実線のSはサジタル方向(放射方向)を表し中心から放射状の光線の変化で、破線のMはメリジオナル方向(同心円方向)を表し中心から同心円状の光線の変化を表しています。
実線(S)と破線(M)の間隔が狭いMTF曲線ほど、均一で綺麗な画質のレンズと言われています。逆に実線と破線の間隔が大きいと非点収差が大きいレンズになる傾向があります。
MTF曲線はあくまで参考に!
MTF曲線はレンズ性能を数値で理解するための便利な指標ですが、MFT曲線だけでレンズ性能のすべてを把握する事はできないので、参考程度にするのが良いかと思います。例えば、逆光耐性やボケの質感、コマ収差など、実際に撮影してみないと判らないレンズの特徴や性能がたくさんあります。
単純に「MTFが高い=良いレンズ」とは限らず、撮影の用途や個々のスタイルによってベストな選択は異なります。レンズ選びの際は、MTF曲線をチェックしつつ、実際の作例やレビューも参考にして総合的に判断するのがベストではないでしょうか。